ガラスのむこうに花束を

という漫画を、昔読んだことがある。

 

 

テレビの中(ガラスのむこう)のアイドルに本気で恋焦がれている女の子のお話。

 

 

 

 

私は小池くんに本気で恋をしているわけではないけれど、小池くんを見ていると、応援していると、ふとこの作品を思い出すことがある。

 

 

 

 

 

 

ただでさえアイドルを目指す彼と応援する私という関係性な上に、このコロナ禍という特異的な世の中で、私たちは小池くんに会えない。

 

携帯の画面を通して、テレビの画面を通して、たとえ直接会えたとしてもフェイスシールドを通して、しか、私たちは彼に会えない。

 

 

いつも私たちは小池くんをガラス越しに見ている。

 

 

 

 

 

 

1月30日から今日までのガラスのむこう側から小池くんを応援していた日々のこと、一瞬一秒全部思い出せる。

 

 

 

 

最初から話題になるような練習生ではなかった。46位の彼にどのくらいファンがいるのか、どのくらい世間に気付かれているのか分からなくて、いつも不安だった。そんな中、

 

グループバトルで初めてちゃんと世間に実力を見せつけたこと

小池くんってダンス上手いんだね!という声が増えて、とっても嬉しかったこと

その甲斐あって順位発表式で46位から26位まで引き上げられたこと

 

 

アルバムをめくるとすぐに飛び出してくるその記憶は、いつも私の胸を熱くする。

 

 

 

正直な話をすると私は最初小池くんが46位の席に座った時、ファイナルまでいけるか分からないなあ、と思っていた。

いつまで残っていてくれるかな、入れ込んだら悲しくなるだけなのかな、と思いながらも、彼を見てしまっていたのは、投票をやめなかったのは、未来を託し続けたのは、彼が私にとって本当に魅力的だったから。

 

いつしかその彼の魅力はガラスのむこうからこちら側に溢れ、彼はたくさんの人の愛に包まれた。

そうして46位から26位になった彼に、もう"いつまで残っていてくれるかな"なんて思うわけなかった。

 

 

 

 

 

26位の彼はいつも当たり前に上を目指し続けていたから、私も彼につられて希望を見た。

 

ポジションバトルで念願のセンターになったこと

身体を小さく丸めて泣いている彼を抱きしめてあげたくなったこと

ようやく本当に世間に"見つかった"こと

 

 

思い出すだけで涙が出てしまうような、美しくて大切な記憶。

 

 

この頃になると、もう僅かな分量を血眼になって探さなければいけないような彼ではなかった。それが嬉しかったのも本当の気持ち。それは本当なのだけれど、世間に見つかりすぎた彼に少し戸惑いの気持ちを抱いてしまったことも、嘘ではなかった。大好きなのだけれど、大好きな気持ちを変わらず大きな声で叫んでいてもいいのか、分からなかった。

 

画面越しでしかお互いを確かめ合えない私たちなのに、小池くんはガラスのむこうからいつも最高の姿を届けてくれていたのに、あの頃私たちは小池くんに、画面越しでも伝わるほどの愛を届けられていたのかな。

いつの間にか本当に手の届かない君になってしまった気がしていた。私たちのことなんて置いてけぼりにしてしまうくらい、どんどん大きくなって順位を上げてデビューすることが彼の役目で、どんどん大きくして順位を上げてデビューさせることが私たちの役目なのにね。手なんか届かなくていいのにね。もっともっと大きい声でお祝いしてあげたらよかった。ごめんね。これが私の唯一の後悔。

なんだか君が私の知っている君じゃなくなってしまう気がして、少し怖かった。

 

 

けれど、46位でも26位でも10位でも1位でも、小池くんは何も変わらなかった。

いや、どんどん実力をつけて成長して顔つきも精悍になって、めちゃくちゃ変わったのだけれど。

浮かれたり驕り高ぶったり傲慢になったり、愚痴や弱音を言ったり、誰かと衝突したりなんて絶対しなかった。いつもいつまでも謙虚で冷静で、けれど熱意と芯があって、誰にでも優しくて、時には18歳らしい繊細な心を覗かせて、ずっと小池くんは小池くんだった。

 

だから私はやっぱり、彼が好きで仕方がなかった。ピラミッドの1番下段で小さくなっていた彼も1位のゼッケンをつけて少し自信をつけた彼も、全部小池俊司で全部大好きだった。

 

小池くんを好きになってから今日まで、小池くんを好きになったことを後悔したことは一度もない。小池くんに残念な気持ちを抱いたこと、失望したこと、応援していて辛いと思ったこと、一度もない。ずっとずっと一瞬一秒、大好きだった。

そんな小池くんが、私の自慢で、誇りで、とっても大切だった。

 

 

 

 

 

彼を見つけられたこと、変わらぬ気持ちでずっと応援できたこと、それだけで私は幸せだったのだけれど、

 

 

気付いたら小池くんは、ファイナルへの切符を手にしていた。

 

 

 

 

小池くんは自分の手で"運"を手に入れる力がある人だと思うことがある。

 

26位で舞い落ちる花びらの最後の1人に滑り込んだことで、ダンスポジション1位を取れた。

1位を取ったことで、ベネフィットを貰ってポジションバトルでgoosebumpsを選択する権利を得た。

そのgoosebumpsが1位を取ったことで、またもベネフィットを得て6位という順位でファイナルに駒を進めた。

6位だったことで、ファイナルでメインボーカルを選択できた。

 

オーディション中の彼は、全ての点と点が線で繋がっていた。グループ評価、ポジション評価、コンセプト評価をそれだけで完結させずに、次の評価に確実に繋げて自分の武器を作った。数日前の自分をひとつも無駄にしない未来を、着実に歩んでいた。

それって、めちゃくちゃかっこいい。

いつも理路整然とした顔をしているけれど、めちゃくちゃかっこいい。

 

彼のシンデレラストーリーがファイナルまで繋がっていったことが本当に奇跡みたいで、けれど全然奇跡なんかじゃなくて、奇跡みたいな人生を実力で掴んで歩む彼が眩しすぎて直視できない。ガラス越しでよかった。

1月30日の君が今の君を見たら驚くかな。小池くん、いま君は6位だよ。あの頃の小池くんに教えてあげたいな。

 

 

 

 

 

 

この半年間の記憶、全部全部抱きしめたい。全てが美しくて愛おしくて大切で。

 

 

 

1月30日の小池くん

 

はじめまして。私と出会ってくれてありがとう。私はダンスに明るくないからよく分からないけれど、一目で"好きだな"と思いました。本能が君を見つけました。

公開されたオンタクト評価だけで自分にどれだけファンがついたのか、全然分からないでしょう。楽しみにしててね。

 

 

 

46位の小池くん

 

1番下の段に座らせてしまってごめんね。不安だったよね。けど下の段でピンクのTシャツを着ている君は、とってもかっこよかったです。Aクラスを死守してくれてありがとう。君を見つけた私の目は間違いじゃなかったと思わせてくれてありがとう。

私たちめちゃくちゃ頑張ってるから、もうちょっと待っててね。

 

 

26位の小池くん

 

大躍進おめでとう。けれど向上心のある君は、実は少し悔しかったのかな。センターを任されて初めて大きな壁に当たって心が疲れてしまうこともあったかもしれないね。そんな中たくさん頑張ってくれてありがとう。その頑張りのおかげで君は、信じられないくらいたくさんの人に見つかります。君の逆転劇はここから始まります。

もっともっと上の段の椅子に、必ず座らせてみせるからね。

 

 

6位の小池くん

 

せっかく1位になったのに、守りきれなくてごめんね。けれど初めてのフカフカの椅子、おめでとう。自分の力でその椅子を勝ち取った君が、とても誇らしいです。

あと数日でファイナルを迎えるね。今どんな気持ちで、何を考えて、どんな顔をしていますか?とうとうガラス越しにさえ見えなくなってしまったけれど。だからもうカメラなんて、私たちのことなんて気にせずに、存分に最後の時間を楽しんでください。

6月13日の君が、楽しい気持ちでずっと笑顔でいられますように。たくさんのファンが応援してくれて、初めてのメインボーカルが大成功して、名前が呼ばれて、花道を歩いて自分の席に座れますように。今はただそれを祈ることしか、そうなれるように投票するしか、私にはできません。少しもどかしいけれど、私はずっと君を信じ続けているので、君も私たちを信じていてほしいです。絶対にデビューさせるから。オンタクトの時からは想像もつかないくらいの数の君のファンが今、全力で戦ってるから。もう少しの間、信じていてください。

 

 

 

 

 

 

私たちは小池くんに会えない。

 

携帯の画面を通して、テレビの画面を通して、たとえ直接会えたとしてもフェイスシールドを通して、しか、私たちは彼に会えない。

 

 

 

 

会えない誰かを想って人生をかけて応援すること、こんなにも好きだと思えること、自分の中にそこまでのエネルギーがあること、全部嬉しい。

会えないけれど、会えないから、私は今こんなに頑張れている。

 

 

デビューできるか分からない(するけど)。デビューできなかったら、画面越しでももう会えないかもしれない(するけど)。デビューしたとてこのご時世、果たしていつ会えるのかも分からない。このままずっとガラスのむこうから彼を見守ることしかできないかもしれない。

 

けど、画面越しだから君に出会えた。見つけることができた。応援することができた。声の出せない世の中で、文字として声を届けることができた。たくさんの幸せをもらって、たくさんの愛を返せた。

アイドルを目指す彼とそれを応援する私、として出会えてよかった。

 

 

 

 

 

半年間、たくさんの君を届けてくれてありがとう。本当に幸せだったよ。6月13日以降、アイドルとしての君もたくさん見られるようになるといいな。楽しみだな。

そう願って、今日も明日も私は画面のむこうから、君に愛を、花束を届けます。

そのたくさんの花束で、小池くんの人生を花道に彩っていきたい。

 

届いてるかな。届くといいな。

 

 

 

 

 

 

ガラスのむこうに花束を